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September 21, 2009

ホリプロ・銀河劇場「ネジと紙幣」

9月17日 ホリプロ・銀河劇場「ネジと紙幣」@銀河劇場
サブタイトル“based on 女殺油地獄”とあり倉持裕さんが近松の女殺をもとに書き下ろした作品。森山未来さんストレートプレイでの初主演。初日に観て来ました。
歌わないし三枚目でも王子さまキャラでもない汚れ役を森山くんが十二分に生きています。ともさかさんと共に体当たり渾身の舞台は実に観応えあり。

下町の零細工場のダメ息子・行人(未来くん)が幼馴染でお向かいの工場の若奥さん桃子(ともさかりえさん)をどうして殺してしまったのか?を桃子の夫・永太郎(小林高鹿さん)の回想風に語り始める2時間10分はまさに現代の女殺油地獄。歌舞伎と違うのは、行人の家業のネジ工場も桃子の家の工場も裕福ではなくギリギリの生活をしているという設定。これが現代での説得力を深め、物語に惹き込む要素。家庭的にも行き場の無い行人の心情だけでなく時代の閉塞感をも反映して、やるせない気持ちが増幅されます。
はみ出し者の行人が改心し、良かれと思って始めたことが周囲の無理解から負の連鎖となって巡り廻って惨事を引き起こす。世話したがりの桃子のあたたかさがはじめから行人のものだったら、こんなことにはならなかったのに、と全てについてない行人が実に切なく

悪ぶっていても根が善人だろう行人に森山くんの透明感が良く合います。りえちゃんの自在な台詞が物語をしっかり形に創り出して。季衣さん、田口さんはじめ皆さん実に手堅く。

島次郎さんの美術が秀逸。冒頭の土手とボート小屋の配置は歌舞伎版の冒頭を実に上手く取り入れて、工場やその住居部へのセット転換は劇場機構を駆使して実に大胆。大劇場にいかにも小劇場風な空間を産み出しねじ伏せています。
何より驚いたのは殺し場での”油”の出現させ方。人物に集中して観ている間に一気に風景が変わっていてビックリさせられました。からくりに気付けば「あぁそうか」なんだけど、そこに至る伏線が憎らしいほど上手い。これがやりたいが故に本書いちゃったんじゃないかと思うくらい(笑)。

作品とは関係ないけど仮チラシ第2弾でタイトルが変わっていて、率直な感想として『古臭いな。内容も地味そうだわ』でした。
最寄駅がモノレールということで開場当初から常に集客に苦戦している劇場でこのタイトルだと危ないんじゃないか...と勝手に心配したとおり開幕前から得チケ各種でまくってましたね。実力派を揃えていても出演者の名前だけで集める限界があるでしょう。観終えてみれば、まさにこの題名がしっくりくるとはいえ、興行的にはもう一捻りキャッチーなネーミングが必要だったのではないでしょうか。多くの人に観てもらいたい作品と思うだけに勿体無い気がします。

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