« メモ | Main | ニイガタ »

December 10, 2007

花組芝居「KANADEHON忠臣蔵」

11/30~12/9 花組芝居「KANADEHON忠臣蔵」世田谷パブリックシアター

ネオ歌舞伎と称して旗揚げした劇団が20周年記念公演のトリに選んだ演目が『仮名手本忠臣蔵』しかも全段通し。現在上演される歌舞伎の通しは昼夜をかけて、それでも十段目なんて飛ばされてしまう大長編(詳しく知りたい方はWikipediaで)。それを休憩込み二時間半で納めてしまおうという大胆な試み。脚本は石川耕士さん。昨年ピッコロ劇団で加納さんが演出をした作品の花組仕様改訂版。歌舞伎の真似事なんかではなく、ひとつのジャンルとして確立した、と言ったらちょっと言い過ぎかな?でも他では観ることのできない花組芝居版の『KANADEHON忠臣蔵』を堪能しました。


一般的に忠臣蔵といえば、松の廊下~判官切腹~お家断絶~内蔵助達による敵討ち。テーマは「忠義」なんでしょうね。
年末になるとテレビでも必ず何かしらの形で登場するほど国民的メジャー作品。どこにそんな魅力があるのか?は人それぞれ思うところは違うでしょうが、『芝居の独参湯(どくじんとう)』と呼ばれ歌舞伎でこの作品が掛れば必ず大入りになるという日本人に愛されている作品。それだけにどう取り組むかが難しいものではないかと思います。全段通し、真っ向勝負を挑むのは20年の積み重ねに自信があるからではないでしょうか。

暗転から幕が上がり、目に飛び込んでくるのはいくつかのパートに分けたパネルスクリーンで作られた定式幕。これが上下に動くことがまず新鮮。定式幕は横に引くものという固定観念からいきなりはみ出して、しかも部分的に上げ下げできるから小気味良いスピード感で場面を次々に変えていく。現代劇では当たり前な手法だけれど、トータルで歌舞伎味を失わず、かつスタイリッシュにさくさくと展開させる技はさすがというより他にありません。義太夫とアフリカンミュージック(だそうです)が違和感なく融合し、ドラマの色を明快に伝えてくれる選曲センスもお見事。

忠臣が主君の無念を晴らす為に仇討をする、その裏側では力弥と小浪が引き裂かれ、お軽の家族は犠牲になり、利平はニセの夫婦別れをし...様々なドラマがあることをきちんと描いています。由良助ひとりのために大勢が動くというのではなく、ひとりひとりが集まってひとりひとりの物語も持ち寄っている。群集劇という捕らえ方。

師直の強引な横恋慕に窮する判官の妻顔世。お軽が勘平に逢いたいが故に(顔世から師直への肘鉄くわせる)文遣いを申し出なければ、松の廊下での刃傷はなかっただろう。そんな視点からスタートする忠臣蔵は男達だけの仇討物語ではなく、もっと泥臭い人間味あるものだと気付かせてくれます。ちょっとした思い違いで親殺しと罵られる勘平は、命を捨てる羽目になったからこそ悲劇として上演されるけれど、実はかなり滑稽な出来事だよね、という見方も確かに、と思わされます。

そこまでの人間臭いドラマと打って変わった十一段目。文楽では形態が違うけれど、歌舞伎でも後から付け足しになったため十段目までとはカラーが異なる場。花組版でも祝祭的な晴れがましい場面として様式的に展開。討ち入りシーンは敵の姿は無く、浪士が手にする戸板の裏には絢爛豪華な襖絵が。雪降る中で鮮やかに縦横に動いては中心に戻り、5対の襖を左右に開いた奥には師直。無事首を上げての勝鬨には明るいBGMの効果もあって清々しさで溢れていました。物語を通して振り返れば決して明るい話じゃないのに、何故か「あぁ良かったね」と思わされちゃう不思議さ。

二時間半に凝縮させるためかなりのスピードで物語が進みます。一幕は大序から六段目で1時間20分、二幕が七段目から十一段目までで1時間ちょっと。判官切腹の場面から間髪置かずに山崎街道となったり、一力茶屋の暖簾から旅路の嫁入り始まっちゃったり、驚くばかりの時空の飛び方。(裏門合点から二人の道行きという流れはかえって正しい流れだと思う。)それでもキーになる場面はじっくりみせるので物語を知らなくてもストーリーについていけないことはないと思いますが、字幕などで場面の説明をつけることも無いので、正確なところが判らないまま観てる方もいらしたんじゃないかしら。誰もが粗筋は知ってるだろう、という前提があるからできる荒業って気がします。
(演出家は自身の体験から「わかんなくても観てて面白ければそれでいい」っていうスタンスで、観客に過保護な説明はしないでしょうからあまり知られていない作品でも同じかもしれないですが)

桂さんが由良助、と知った時には「ニンじゃないのでは...」と思ったのだけれど、大き過ぎることも無く等身大の大星さまが実に素敵でした。
いつまでも可愛くかっこいい大井さん。潤さんは改めてキレイなだ、と。情味ある郷右衛門の秋葉さんにはいずれ本蔵もやって欲しいな。加納さん戸無瀬は仕草のそこかしこに歌右衛門さんが見え隠れ。
昨年入座した三人が先輩達と互角に芝居してる姿が頼もしい。

|

TrackBack

TrackBack URL for this entry:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/12629/17326802

Listed below are links to weblogs that reference 花組芝居「KANADEHON忠臣蔵」:

Comments

これ見たかったけど、あれよあれよで終わっちゃって残念!
二時間半の忠臣蔵、見事だよなあ(感嘆)。
テレビで放送しないかなあ。Joyさんのレビュー読んで余計見たくなっちゃったよ。

Posted by: pyoko | December 11, 2007 at 09:16

贔屓目抜きにして面白かったよ~
忠臣蔵そのものを初見の人が面白かったと言ってるのを劇場でちらほらと聞きました。でもやっぱり歌舞伎や文楽を知ってる人が観たら更に色んなところで驚いたり笑ったり出来ると思う。

NHKが入ってたそうなので、近々にオンエアあるんじゃないかしら?是非観てください。

あ、でもその前に14日新潟りゅーとぴあとか翌週BRAVA!ってのもありよ(笑)

Posted by: J | December 12, 2007 at 01:25

Post a comment