「国盗人-W.シェイクスピア作「リチャード三世」-より」
13日 せたがや文化財団「国盗人-W.シェイクスピア作「リチャード三世」-より」世田谷パブリックシアター
パブリックシアター開場10周年記念プログラム。
シェークスピアの「リチャードⅢ世」をベースに翻訳を多く手掛ける河合祥一郎さんが萬斎さんのため狂言テイストを含めて書き下ろした新作。音楽は田中傳左衛門さんのオリジナルで生演奏はご本人含め日替わりでというゼイタクさ。演出も萬斎さん。
白薔薇一家の悪三郎が敵対する赤薔薇王だけでなく兄達も陥れ自分が王にのし上がるけれど、非情な王は家臣に裏切られて堕ちていくおはなし。
舞台装置(美術:松井るみさん)は後方に雛壇状のセットがあるのがちょっと違うけれど、この劇場で萬斎さんが上演するお狂言でよく使う両サイドに橋掛かり風の通路がある軽く八百屋に傾斜した四角い平舞台。ぴかぴかではなく、かなり古ぼけて四隅の柱など中央付近が細く上下が太く焼け残った風情(形が古代の舟の魯にも見えて)。
純白のドレスに日傘を差した女性(白石さん)が旅の途中にふと訪れた荒れ能楽堂、というような夢幻能を意識した構成。
原作の冗長な台詞から美味しいところをピックアップ、人間関係も判りやすく整理され無駄な登場人物がいないのでリチャード三世そのものよりすんなり物語に入っていけます。
だけど全体的に演出が親切すぎる、というか説明的要素が多いために冗長になっているように感じます。もう少し短くできるのを説明で引き伸ばしちゃうのは勿体無い。
特にオープニングとエンディングと同じ句をきっちりしまいまで口にさせて演技でも強調させたのは過剰な気が。「夏草や...」のあとは言葉にしないでくれる方がずっといいと思うのですよ。この句を知らない人って殆どいないはずだし、身体言語が発達した方の仕草は万言尽くすよりイメージが広がっていくんですもの。
額や頬、目の下などに濃い目のシャドーを入れて悪人顔を作っていても、萬斎さんはホントの悪人には見えない。というより人間臭さが感じられないのです。その分「裏切り体質だろうな」ってとこには説得力がある(^^;
ほぼ出ずっぱりで鎧のコスプレ(って芝居の衣装で言うのはヘンかな?)と身体的にかなりきつそうなのに、そんな気振りもみせず終始力強い。さすが鍛錬してる方だなぁと感心。
詠うような台詞はたいそう美しくリズムも心地よいのだけれど、どうしてか素通りしていってしまうのが残念。
アンならぬ杏はじめ女性の役ほとんどを一人で演じ分ける白石さん。頼りない女性から憎悪と呪いに満ちた老皇太后まで瞬時に別人格をのり移らせる柔軟なトランスフォーマーっぷりを堪能。狂言師と対峙して跳ね返しちゃう身体って物凄いと思います。
悪三郎を苦しめる悪夢の中の女5人を演じ分けるときに、羽織ものだけ着替えてカツラは黒衣役の女性達に被らせて白石さんの頭上にみえるよう一緒に動いてるのが面白かった。
濃~い二人に挟まれていると印象が薄くなって損な感じだけれど、大森博史さんも今井朋彦さんもそれぞれにきっちりアピールしてらっしゃいました。
現代劇の役者さん達と一緒だと、狂言畑の石田幸雄さん月崎晴夫さんは、ただ立っている、その佇まいで様々なことを表現できる身体を持っているのが良く判ります。
コシノジュンコさんの衣装がとてもステキ。
和服ではなく中国王朝を連想させるオリエンタルな衣装をはじめ、それぞれが演出上のかなりの部分を担っていると言えるほど雄弁です。中でもゴムのような素材で作った鎧風のボリューム感が面白くって、リチャードが負い目にしていた身体的ハンディを上手に表現してます。でもずっと着けてるのは重くてしんどそうなんですけど実際は軽いのかな?
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