Bunkamura「タンゴ・冬の終わりに」
9日 Bunkamura「タンゴ・冬の終わりに」シアターコクーン
おはなし、は清水邦夫さんのファンサイトにある上演データにおまかせ。
1982年の初演から数えて4演目とのことですがワタシは初見。上記データの感想を拝読した感じでは演出はほとんど変わっていないようですね。て完成しきっている作品ということでしょか?
実際、蜷川&清水作品というカテゴリーが確立されてるとしたなら、この舞台はその代表作かもしれません。60年安保闘争時の若者群像を漂わせながら本作を進行し、また時代に戻っていく。熱に浮かされたような衝動の時代への郷愁のような香りに包まれた作品。
完成形であるが故に今上演するのにあったほうが良い要素、つまり現代にマッチさせられるかどうかは役者さん達にかかってしまうんだと思います。ハードル高いよね。
現実ならぬものに苛まれて憔悴している盛(堤真一さん)と悩んだ末に彼を追いかけてきた妻・ぎん(秋山菜津子さん)。この二人がいるだけでも充分に物語世界が成立してしまうところに連の弟・重雄(高橋洋さん)が地方で暮らす若者の存在感をきっちり表現して手堅く絡み、盛のおば・はな(新橋耐子さん)や水尾の夫・連(段田さん)が絶妙なカウンターアタック。信子(毬谷さん)が地味だけど重要なアクセント。水尾(常盤貴子さん)の白いレトロワンピース姿の美しさ、とキャスティングがぴたりとはまって。
堤さん、現実と幻覚とをダブらせてる盛を演じるのは二倍疲れるでしょうに全く破綻無く盛そのもののようにそこにいる。幻覚・幻聴に怯えのたうち回る姿は切なくて放っとけないですわ。時折みせる無垢(=脱俗世)な笑顔に弱いのよねぇ(^^;
洋さんは軽そうだけどほんとは土地にしっかり根付いてる強さを見せてくれ、相手役の毬谷さん(って「桜の園」と一緒か?)がご本人だと気付くまでに時間が掛かるほどの地味キャラを凄い説得力で。
常盤さん舞台2作品目とあって動きに硬さがあるのは否めないけれど見た目の華は充分。薄暗い場末の映画館の中で彼女だけ浮き上がって別世界に見えるその存在だけでOKかと。ただビジュアルという意味でアルゼンチン・タンゴは(セクシーさまでは望まないから)もっとシャープに踊って欲しかった。ヴィスコンティ映画あたりのイメージでお願いしたいかと。
まさかここで今年3回目の「オセロー」に出会うとは思ってませんでした。この舞台の初演で盛を演じたのは平幹さん。ワタシ的に繋がるものが。そして堤さんの舞台で“ミズヲ”というタンゴじゃない単語を聞くと連想する芝居があったりする。しかもBGM『カノン』ですよ。そして終幕には満開の桜。
さらに余談。「何年かに一度、雪と桜が同時に見れる時には『凄く良いこと』か『凄く悪いこと』のどちらかが起こる」といった台詞があって、大成駒を想いました。


Comments
懐かしいです。私、再演の時に幻の観客で出演しておりました(^^;)
ちょうど大学4年生の卒論提出時で、私を含めて数人いた大学4年生は学校を優先させて良いとの、御達しが出ていたっけ。
でも、蜷川さんの稽古を休むと、自分の居場所がなくなっちゃうのが怖くて、稽古を最優先させていました。懐かしいなあ。
蜷川さんは、幻の観客役は、ギャラがほとんど出せない分、いろいろなことを教えてやると、本番の合間とかにも、いろんな話をしてくれました。
私が三味線を弾けるのを知ると、劇場に持ってこさせ、にわか三味線教室になったり。厳しいけどとってもやさしい人でしたよ。灰皿投げてましたけど(^^)b
平さんと松本さんの迫力には、すっかり圧倒され、舞台に対する考えが変わりました。
今回は、すっかり若返りバージョンですが、信子役は、ちょっと驚きです。毬谷さんを信子に使うなんてすごいキャスティング!!
見てみたかったなー。
Posted by: バケラッタ | November 14, 2006 at 20:06
わぁ、バケラッタさんご出演だったんですか!
灰皿投げてる蜷川さん、ナマでご存知とは羨ましい。
卒論書きながらお稽古&本番ってさぞかし大変だったのでは?なんせすごいパワーを求められる役ですものね。
再演って'86ですよね、幻の観客たちは(子供の頃の記憶などで)演出家の言葉が解説無しで辛うじて伝わる世代かしら?
いまの若者にどうやって時代の熱狂を体現させたのか、蜷川さんに聞いてみたい気がします。
若返り。確かに堤さんの外見で一線から引退する役者って若過ぎるようにも思えますけど、病気のことを考えると、"老い"に関係なく破綻していく心の憐れさがよりピュアに伝わるように思えるのですけどいかがでしょう?
信子はほんとに誰だか気付かないメイクと気配の変え方で毬谷さんの変化ぶりお見事でした。「櫻の園」の時も地味な家庭教師だったし(でも突拍子も無い服装することもある)。蜷川さんが毬谷さんにやらせたい役のパターンがあるのかも?なんて思いました。
29日までやってるし、オケピ等でまだチケット出回ってますからご都合さえよければ見に行かれては?(^^)
Posted by: J | November 15, 2006 at 01:31
再演って'86ですよね、幻の観客たちは(子供の頃の記憶などで)演出家の言葉が解説無しで辛うじて伝わる世代かしら?
そうですね。私は母の昔のワンピースを押入れから探し出して衣装にしていました。学生運動の残り香のようなものは知ってますしね。
今回幻の観客をやる人と話をしてたとき、「60年代の服、家にあります!ワンピースとかも。おばあちゃんの服が!」と言われた時は、ひっくり返りそうになりましたが、そりゃそうか。
再演の時は、イージーライダーを見ている設定でした。ベニサンに同じセットを作って稽古してました。
幻の観客は、それぞれが思い切った芝居をし、そして、芝居がOKの人から名前が呼ばれていき、周りの人はその人の邪魔をしちゃいけないけど、目立たない芝居をしているうちはいつまでも名前を呼んでもらえない。全員が名前を呼ばれるまで稽古は続くので、死に物狂いになる。もちろん、その間には、OKを言われた人も怒鳴られたり、気を抜くことは出来ない。
平さんも松本さんも稽古場からすごかった。そんな稽古場だったので、稽古場そのものが熱く戦いだった気がします。
他の商業演劇とは、確実に違う空気でしたが、それがこの芝居の世界になっていたんでしょうね。
是非、今回のも見に行けるように調整してみようと思います。
Posted by: バケラッタ | November 15, 2006 at 13:19
今回も冒頭の映画はイージーライダーです。
客席に大人しく座って映画を観ることだけしか知らない(って実際ワタシもそうですけど(^^ゞ)と、観客の熱狂ぶりが判らないだろうなぁと思いつつ観てました。
Posted by: J | November 18, 2006 at 01:08