パルコ劇場「トーチソング トリロジー」
21日 パルコ劇場「新」スタンダードシリーズ Vol.4「トーチソング トリロジー」PARCO劇場
初演の鹿賀版もPARCOで観たのだけどあまり覚えてない(^^;すっごく重苦しく観終えたことだけは思い出せるのだけど。
トーチソングとは無くした恋の哀しみを切々と歌う女性の失恋歌のこと。劇中ではヘレン・メリルともう一人(失念(^^;)の名前が挙げられてたけど日本だったら中島みゆき?
照明を落としてはいてもセット(美術:ニール・パテル)に開放感があるからか、キャストの持ち味なのか重苦しさはほとんどなく、軽やかな空気さえ漂う。それなのにエド(橋本さとしさん)がおかしな仕草をしてもさして笑いが広がらず、むしろしんと息を呑んで見入ってしまうのは、アーノルド(篠井さん)のとてもリアルな人物造形があるからかと。彼のドキュメンタリーを見ているような錯覚に陥るのかもしれません。
ナイトクラブの楽屋でショーのため女装しているアーノルドの一人語りで始まり(このシーン記憶に無いんだけど鹿賀さん女装してたっけ??(^^;)エドとの会話で展開する1幕は、淡々としすぎな気もします。情けない位に自分に自信がないエドと自分であることに不安を覚えるアーノルドは惹かれあっていても互いをカバーする何かが欠けている。
破局した二人それぞれに新しい相手が登場する2幕からようやく物語が転がっていきます。自分にはローレル(奥貫薫さん)がいるのに、若いアラン(長谷川博己さん)がアーノルドと寄り添っていることに嫉妬するエド。エレンとはカウンセリング・ミーティングで知り合ったというところが彼の不安定さ、ローレルの心細さを教えてくれる。3人とは趣が違い一人でしたたかに生きてきたアランがアーノルドを支えているのがいかにも自然な人物形成。
そして3幕。常識人であるアーノルドの母親(木内みどりさん)は息子がただ病気なだけでいつかゲイじゃなくなると頑なに信じ込み、アランとの幸せをストリート・ギャングに奪われた後、養子ディビッド(黒田勇樹くん)とおだやかな暮らしを始めている彼の実態を受け入れようとしない。
互いに親子としての情愛は充分あるのに、自分のあるがままを認めてもらえない悲しみをぶつけるアーノルドと母の口論は、核心をグサリと言葉にして相手を、そして自分をも傷付けあい、見ていて胸が痛くなります。たぶん展開が娘と母親の口論に似ているからでしょう。
篠井さんの常に不安を抱えているような落ち着かないところがアーノルドという人物らしいように思えます。ディビッドに向ける母性は女言葉を使い慣れている篠井さんならではの嫌味のなさ。さとしさんの不思議な身体の使い方も、どこか普通じゃない自分を気にしてるエドに似つかわしい。奥貫さんの生堅な感じも悪くないんだけど、ちょっと沈みがち。キャストを知った時には『ちとトウが立ってるかも』と思った黒田くん、高校生の元気でいてナイーブな部分と、虐待された辛い過去を持つ子供故の大人びた雰囲気とをとても良く表現して良かった。
母親の木内さん、初演時の山岡さんのようなパワー漲る自信ある厳格さこそ薄いけれど、いかにもその辺にいそうな昔気質の普遍的な母親像で、こんな人と傷付け合うのはとても辛くて切ないと思わされます。
開演前は「Stand by Me」(この曲で始まるのは何作品目だろう?)2幕前に「Hard Luck Woman」そして3幕は「Love Gun」とアップテンポなその時代の曲を使うのは鈴勝演出の特徴かな。
ナイトクラブのピアノ弾きだったり要所要所に登場するエミ・エレオノーラさんの決して上手くはないけど味わいあるピアノとハスキーでジャジーなトーチソングが効果的。
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