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October 05, 2006

オリガト・プラスティコ Vol.3「漂う電球」

4日 オリガト・プラスティコ Vol.3「漂う電球」本多劇場

ケラさんと広岡由里子さんのユニットの第3回公演。ケラさんと広岡さんのシュールな感性を活かした前2作と打って変わって、日常を描いたウディ・アレンの戯曲を今回のために翻訳(訳:鈴木小百合さん)し日本初演。
広岡さんはじめ役者さんがみんなはまり役だし手堅いので安心して物語の世界に浸れました。かなり好き。

1945年のブルックリン。それぞれ裕福だったけれど大恐慌などで没落してしまった家庭に育った夫婦マックス(伊藤正之さん)とイーニッド(広岡さん)はブルックリンのボロアパートで10代の息子ポール(岡田義徳くん)スティーブ(高橋一生くん)のと4人暮らし。マックスはしがないバーのウェイターで宝くじに当たって一発逆転だけを考えてるくせに若いウェイトレス(町田マリーさん)に入れあげて生活費を殆どいれない。ポールは幼い頃IQが高く母の自慢(「あなたは天才」)なのだけど、どもりで自閉症傾向があり部屋で一人マジックの練習をするのが生き甲斐。スティーブは(「頭は悪くないけど努力しない」)救いがたい家庭に嫌気がさしていて不良仲間と遊び歩いてる。イーニッドがパートでなんとか暮らしを支えてるものの家族は崩壊寸前。そんなある日、イーニッドのお膳立てで芸能プロのマネージャー・ジェリー(渡辺いっけいさん)がポールのマジックを見にアパートへやってくることになり...

生活にくたびれ果てて、どん底の生活を抜け出すためにも息子に望みをかけるイーニッド。頭がいいと信じてるポールに「勉強して立派な人になれ」と言い続けてたのが無駄だったと判り、マジシャンだなんて非現実的な夢を一喝したくせに、知人の弟が芸能界にいると知った途端にポールを売り込もうと、どっから見てもダメなポールのマジック(市販の三流ネタ)を素晴らしいと言い張り必死になる姿が可笑しくて切ない。
そんなイーニッド自身を誉めそやすジェリーとの束の間の夢のような時間。そして現実がまた戻ってくる。
観ているうちに既視感あるなぁと思い当たったのがテネシー・ウィリアムズ。イーニッドは「ガラスの動物園」のアマンダとローラを足したような役。息子に期待を掛け、自身が夢のチケットを手に入れたと思った瞬間に夢破れる。後で検索したらやっぱりアレンがウィリアムズの影響を受けて書いた作品だったそうで。判り易いっちゃ判り易いし、でもこれオマージュなの?パ○リとは言わないのか?なんて密かに思う(^^;

いつもながら照明の使い方がドラマティック。セピアに近いケラさん独特の明かりの色遣いがとても好み。漂う電球の色もこだわり抜いたのでしょうね。季節はずれの大きな蛍みたいだった。
丹念で抑制の効いた心理描写もこの作品のトーンによく似合ってる。狭いアパート、薄いドア越しに聞こえてくる声に反応する子供達の姿を丁寧にみせるのが印象的。台詞が全く無い彼等の姿を描くのは戯曲指定なのか気になるところ。
特にスティーブの描き方がいいのですよ。ちょっと悪ぶってはいても本質的にいい子で、母の言葉にすぐ傷ついて膝を抱えたり、比較されて反発しても兄と仲良くマジックやってたり、母と来客との恋愛めいたやりとりに怯えたり。家族の中で一番タフそうに見えても壊れ物のようにナイーブなまだ10代前半の子供を一生クンでみせるって当て書きのよう。
岡田くんはたまたま夏の椿組で同じような役柄だったため観る側が類型化してしまってちょっと運が悪かったなと思う。この作品だけで観てあげたかった。
広岡さん疲れた中年女性から夢の世界に突入した途端にすっかり雰囲気が変わる。伊藤さんのダメ親父ぶりは安心してお任せ。いっけいさんは胡散臭いマネージャーなんて職業を過剰に作らずおや?と思わせたあとに落としネタが隠されてる辺り用意周到というか卑怯と言うか。出番は長くないけどしっかり持っていきますね。(カツラとの境目をやけに濃い茶色に塗ってたのはワザとなのかどうかだけ知りたいかも(^^;)

今年は「ヴァージニア・ウルフ~」も手掛けてるケラさん、翻訳ものとの相性がとてもいい気がする。というか、ワタシがケラさんが演出する普通の(笑)ストレートプレイが好きってことか。翻訳じゃないけど「SLAPSTICKS」も好きだったっけ。

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Comments

私もかなり気に入りました。てつかさんにコメントいただいているので、みんなで『漂う電球』の輪を広げましょう。″\○/゛

Posted by: ごろうやっこ | October 05, 2006 23:44

キャストも演出も作品に良く合ってるバランスの取れた作品ですよねぇ。
もちろん他のキャストでもいいだろうけれど、できればおんなじ顔ぶれで再演希望ですわ。

Posted by: J | October 06, 2006 00:42

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