« 「やわらかい服を着て」新国立劇場 | Main | 映画「RENT」 »

June 12, 2006

松竹「和宮様御留」

4日~ 松竹「和宮様御留」新橋演舞場
ま、何回か観るので(^^;
言わずと知れた有吉佐和子さん原作の『皇女降嫁は替え玉だった』という大胆な仮設に基いたスケールの大きい作品。花組芝居の本公演として2004年にシアターアプルで上演されたものを加納さんが演舞場版に練り上げ小劇場から商業演劇へと飛び出した作品。出演は波乃久里子さん英太郎さん安井昌二さんはじめ新派の方々を中心に、池畑慎之介さん小川眞由美さん松村雄基さんと商業演劇らしい豪華なうえに女形異種格闘戦めいた顔ぶれ。しかも花組芝居からはフキを演じた植本潤さんが同じフキ役に大抜擢された他、加納さん水下さん八代さんもご出演。演出は竹邑類さん。

大劇場で観て改めてなんてスケールの大きな話なのだろうと感心しましたわ。天下国家の話だけれど、登場人物がその等身大の中で語り、行動する、だからこそ距離感を感じずに受け止められる。名も無い孤児が大事件に巻き込まれて翻弄される姿が哀れでなりません。
演出テーマなのかな?月がずっと見下ろしています。冒頭だけ三日月であとは場面により色が変わる満月。それが最終景では次第に太陽となり、更に色濃く血の色めいて禍々しい日の丸に。多くの人々の犠牲により成立した公武合体政略結婚の象徴なのでしょう。
登場人物全てに物語があり“この人が主役”というのがない群像劇って座長公演が多い小屋では新鮮。大劇場の上演形態に合わせるための長尺化で、花組版では語られなかったト書き部分に当たる人物関係や背景が加筆されてて判りやすい。特に土井重五郎と岩倉具視そして宇多絵との関係性が前フリとして付いたのが良かった。

英太郎さん池畑慎之介さんと同じ場面にフキの潤さん勝光院の加納さんが登場しており、女形4人4様それぞれに個性があって堂々と見えるのにゾクゾクしましたわ。八代さんも別の場面で女官姿で小川さんとやり合うシーンが素敵。
フキは花組版より放置され度が増して憐れさも倍増。狂う姿には涙せずにはいられませんでした。号泣。潤さん、初日こそ硬かった?と思える程度でとてもしなやか。伸び伸びしたフキから替え玉となっていじめられる姿には笑いを持たせ、次第に無表情になっていく心の過程を細かく表現して、最後のシーンではぞっとするばかりの死にっぷり。回を追うごとに隙を埋める作業を進化させてます。
加納さんは池畑さん演じる観行院の実兄・橋本実麗と伯母・勝光院の二役。ちょっとコミカルな実麗は愛らしく、大奥で権力ある勝光院としては実に堂々と大きな存在感で凛々しい。千代田城で和宮入城を待ち構え見下ろしている立ち姿に惚れ惚れ(^^)池畑さんとの会話は二人とも極自然で御所言葉であることを忘れそうなくらい板に付いてる。
池畑さん、記者発表の席で『絶対に(着物の)すそを踏まないようにしないと』とおっしゃっていたように長袴の回し方がとてもお上手。実の娘和宮にだけでなく、フキに対してもお辞儀の仕方を教えたり、「か ず」と書けるようになったことを喜んでくれたり乱心したフキに手を合わせて見送ったりと、やさしさがある情に厚い女性像。

ここからは大ネタバレでグチ(^^; 花組版がかなり刷り込まれているので偏った見方もあるだろうけど。
セットが盆の上だけにあり、4分割した中心部分には四角い2階というか別の舞台。つまり1階としては外周だけに4つのスペースを設えてあるためアクティングエリアが狭い。お公家さんの女性の衣裳はもれなく裾引き小袿に長袴。ぞろりぞろりとした装束の人達が揃って動くには不自由そう。まだ幕が開いて日も浅いため衣裳が身についてないうえにその有様で、他の人の裾を踏んづけたり、襖に引いた裳裾挟んじゃったり余計な神経を使わなければならない役者さん達がかわいそう。なので初日にはいなかった衣裳を捌く黒衣の役割をするためだけの女官が登場するようになりました(^^;
盆を挟んで両袖に吊り道具を降ろしセットの一部として使うため、盆上の屋体に天井がありません。3分割ならもっと奥になる裏方部分が客席に近くなってることもあり、次の場面を準備してる様子が3階からとってもよく見えます(^^;歌舞伎で裏方が見えることに慣れてるとは言え、これだけ見えると視界の邪魔になることも。2階部分でのお芝居は転換に間に合わせるため2階の立ち位置まで着物で走る役者さんも丸見え。そして1階席前列からだと見切れるし。
.....ではあるのだけれど、1階席中程から観る分には何の違和感もなし。奥行き云々も気付かない。つまり一階VIP席での観劇だけを考慮した演出ってことなんでしょうかねぇ。

具象的な場を作って演じるために転換数が多く44場もあるとか。最も長い場面で7分間だそうで一幕は特に盆が右に左に何度もぐるぐるして散漫になっちゃう。これさえなければもっと短時間で話が進む、あるいは一人の人物をもっと掘り下げて印象付けられるのでは。

場面数が増えた中のひとつ、水戸浪士と幕府方が刃を交わすシーンは岩倉の台詞でだいたい見当は付くのだけど見た目に誰と誰が何のために戦ってるのか判り辛いっていうより意味不明。

宮様が泣く、宇多絵が泣く、そんなところどころにエコーを掛けるのがヤ。
新倉家の場面だけで唐突に鯉がモチーフとなってるのが謎。壁(襖じゃなくて壁)に大きく描かれてるだけならまだしも、土蔵でフキの最期にばさりと大きな絵幕が落ちてきたのは何故なの?ここだけ抽象的にやる意図は??
覚悟を決めてからの宇多絵ちゃんがやけに肚括ってて堂々とし過ぎてる様な。

重五郎の刀の扱いにすっごい違和感。座る時に刀を身体の右側に置いたり(スペースの関係ね)腰に差した刀を宇多絵に容易に奪われたばかりか、奪い返すのに白刃をがしっと握り締めて揉み合い暫くしてから痛がってみせる(次の場面で包帯巻いてないのもイヤ。フツーあんだけ握ったら掌ざっくりいってますがな)。果ては隠密に囲まれて刀も抜かずばっさり斬られてからようやくブンブン振り回すってのは武士として有り得ないでしょう。これは役者さんじゃなく指導に問題があると思う。

単純ではないお話についていけない方達のためか場内アナウンスでも『あらすじや人間関係が載っているパンフレットを...』とアピールして販売してるパンフのあらすじ、人物相関図、配役など肝心な部分の文字が小さ過ぎて、客席内のやや暗めの照明ではお年寄りには読めません。サイズをA4にしてる意味なし。せめて歌舞伎の筋書程度の大きさが必要でしょう。

|

TrackBack

TrackBack URL for this entry:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/12629/10488548

Listed below are links to weblogs that reference 松竹「和宮様御留」:

Comments

Post a comment