ピッコロ劇団「KANADEHON 忠臣蔵」@兵庫県立芸術文化センター
演出家さんにひかれて行って参りました。千穐楽。
昨年10月西宮北口駅前にできた県立劇場の開館記念事業のひとつ。兵庫県の市民劇団ピッコロ劇団に主役として渡辺徹さんを迎え、演出は加納幸和さん。
仮名手本忠臣蔵全十一段を通してやる、しかも15分の幕間含めて3時間以内(歌舞伎だったら丸二日、大河ドラマは50週)でって「一体どうやって??」と不思議な気持ちで観始める。素舞台にパネルを何枚か使っての場面転換。台詞(スーパー歌舞伎を手掛ける石川耕士さんの脚本)は歌舞伎の戯作風でいて言い方はタメずに。さくさくと物語は効率よく進みあれよあれよと言う間に1時間ちょっとで六段目までを駆け抜けちゃった!それでいて歌舞伎で観てるよりもピンポイントで解説風の台詞があるため展開が判り易い。一力茶屋から始まる後半も要所要所を押さえつつ無駄なく一気に討入まで。確かに忠臣蔵を観たって気になりました。
歌舞伎なら大序(オープニング)の前に登場する口上人形(声は浜村淳さん)が四段目の後に登場。それは「ここまでは舞台が鎌倉だったけど、こっからは関西のお話になります」という境目をくっきりさせるため。親切だわ。忠臣蔵を全く知らない人でもちゃんと観てれば置いてきぼりは食わないはず。400人もの男子中学生団体、反応はどうだったろうかと気になるところ。
書割や小道具の様々なところにあしらわれているモチーフの蝶は"儚いけどちゃんと生きる命"の象徴とのこと。勘平の腹切刀にとまっていたのが印象的。
本来は男性である女形のために書かれた台詞を女優さんが真似て発声するとどうしてもヒステリックになるとかで、難しいのは承知しててもやはりどこかピンとこない。童顔だけど背が高い俳優さんは身体を殺せないから力弥というより育ちきった稚小姓風(^^;
劇団で初の時代劇挑戦でいきなり大紋長袴は言うに及ばず、普通の着物着て歩くだけでもぎこちなく。所作まで覚えるのはさぞたいへんだろうと。そんな中、高師直役の風太郎さんは敵役らしさもなかなかステキ。
渡辺徹さんは由良助の肚がきちっと決まっていて揺るがない。大声張らずとも説得力のある台詞と繊細な演技に驚かされる。TVのバラエティ番組でみせる面と共通して感じられるのは気遣いの細やかさ。
西宮北口駅、梅田から特急で12分普通でも19分の距離なのに駅周辺は広々として地面がたくさんあるし建物もわりに新しいものが多い。なぜこんな便利な場所が新興住宅地のようなんだろう?と不思議だったのだけど、震災でもっとも被害の大きかった地域であることをあとから友人に教えてもらった。立派な県立の芸術劇場は震災からの復興なったシンボルとしての意味もあるのだろうと思うと感慨深いです。
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